はじめに
アイキューブドシステムズで製品開発運用本部の製品開発部に所属している kazuya-oota です。私はAndroidのアプリケーションの開発に携わっており、その中でもデバイスの管理する機能を提供するCLOMO MDM for Androidを主に担当しています。
突然ですが、もしあなたの会社や組織で業務用のモバイルデバイスにAndroid1を採用するのであれば、どのデバイスを選びますか? Androidはスマートフォンやタブレットでスタンダードですがデバイスの種類は膨大で選定は億劫になるかもしれません。 キャリアやリセラーなどコンサルタントにすべて任せるのもよいでしょう。 しかし、事前にいくつかのポイントを知っていることでモチベーションにつながり、コストや使用感のギャップを埋めることができます。 Android Enterpriseに携わる開発者として、ビジネスにAndroidを採用してもらい、またそれに満足してもらいたいと思い記事にしました。
今回はAndroidデバイスの選定ポイントである以下の3点を解説します。
- Android Enterprise Recommended
- デバイスの利用目的
- デバイスの運用台数
Android Enterprise Recommendedから選ぶ
まずは、Android Enterprise Recommended のリストから選びます。 Android Enterprise Recommended はGoogleの厳格な要件を満たしたソリューションのリストです。 すべてのデバイス要件については、こちらに定義されています。
では、具体的にどのようなことが保障されるのかについてですが、
デバイスの最小限の仕様により、プロセッサやメモリの性能が保証されます。
デバイスは次のAndroidメジャーバージョンのリリースが保証され、セキュリティアップデートのサポートが保証されます。 これにより、デバイスのセキュリティが長期的に保証されます。
フルマネージドデバイス2, 仕事用プロファイルデバイス3のいずれでもGoogle Playが利用可能です。 Managed Google Playを通してEMM4からアプリケーションのリモートインストール・アンインストールが可能になります。
その他の要件によりデバイスがAndroid Enterpriseに準拠することが保証されます。 詳しくはリンク先からご確認ください。
目的から選ぶ
利用目的に合わせてどういったものがよいかを考えます。 例えば、営業や販売を担当する方へのデバイスであれば以下のようなユースケースが想定できます。
- 電話機能
- メールの送受信
- チャット・Web会議
- その他、営業用ツール
また、特性としては以下のようなことが考えられます。
- デバイスは個人で利用
- デバイスが故障しても業務は継続可能
このような場合であれば、デバイスは電話タイプで、マシンパワーは必要ありません。 各メーカーのエントリーモデルや、ミドルモデルを選択すれば調達コストを減らすことができます。 Android Enterprise Reccomemdedからメモリ、CPUのクロック、ストレージサイズなどのスペックを制限して候補を探します。
次の例として、工場や倉庫での製品管理・製造を行う方であれば以下なユースケースが想定できます。
- 在庫管理
- 製品の写真撮影
- 在庫データベースのアクセス
また、特性としては以下のようなことが考えられます。
- デバイスは複数人で共有して利用
- デバイスの故障で業務停止
このような場合は、デバイスは高性能で故障に強く堅牢であることが望まれます。 Ruggedデバイス(耐衝撃、耐水性をもつ堅牢なデバイス)であれば利用者は安心して快適に利用できるでしょう。
Ruggedデバイスは先述のAndroid Enterprise RecommendedのリストでDEVICE CATEGORYから絞り込むことで表示されます。 候補のデバイスの詳細を確認して、運用に耐える性能であるかを確認するとよいでしょう。
運用規模から選ぶ
もし、数千〜数万台のデバイスで大規模な運用するのであれば、デバイスのEMM登録方法も選定の対象になります。 Android EnterpriseにはAndroid 8.0以降の対応デバイスではZero-touchによるEMMへの登録が追加されました。
この機能は大規模なAndroidデバイスを一括で事前に設定することができ、シームレスに業務で利用できるようになります。 Zero-touchの設定がされたデバイスは利用者が箱から取り出して起動するだけで業務に利用することができます。
Zero-touchはCLOMOを始めとした多くのEMMが対応しています。対象のEMMの対応状況はEnterprise Solutions Directoryから確認できます(EMM Features の Zero-touch enrollmentで検索)
また、デバイス側の対応状況は、同じくEnterprise Solutions Directoryの「Zero-touch Support」から確認できます。
その他の制約
ここまでで、選定するデバイスはイメージできたのではないでしょうか? しかし、それ以外にもさまざまな制約が発生します。これらはその一例です。
例えば、法的なルールによるものです。 金融機関のようにデバイスには常に最新のセキュリティパッチが適用されている必要があるとすれば、セキュリティの制約が生まれます。
- デバイスには自動的にシステムアップデート・セキュリティアップデートがインストールされなければならない
- デバイスの利用中はセキュリティアップデートのサポート期間内でなければならない
次にアプリケーションによるものです。 自社開発のプライベートアプリケーション、公開アプリで更新頻度の少ないアプリケーションなどではAndroidバージョンの制約が生まれます。
- 最新のAndroidバージョンを選択できず、特定のAndroidバージョンの範囲から選択が必須
- システムアップデートが提供されても、Androidバージョンのアップデートができない
終わりに
Androidが仕事用のモバイルデバイスとして採用されることは一般的です。連絡用の携帯電話としてだけでなく、業務の効率化、コラボレーションのためのツール、業務のコアとしても活用され、EMMと合わせて使うことで組織でも安心して使うことができます。 また、さまざまなメーカーや機種があり、多様な働き方に対応しています。ビジネスに合わせたデバイスを選択することで業務の効率化や成功に繋がります。
- Androidは2008年にモバイル機器用のオペレーティング・システムとして登場し、現在までにバージョンアップが継続的に行われており、昨年2021年にはバージョン12がリリース、2022年には13(プレビュー版)が公開された。また、世界中のメーカーよりAndroidをオペレーティング・システムに採用したスマートフォンやタブレットなどが販売されている。↩
- 企業が所有するデバイスで、デバイスの完全な管理が可能なデバイス運用方法。IT管理者は広範なデバイス設定が可能。↩
- 企業または個人の所有するデバイスで、仕事用プロファイルを作成する運用方法。IT管理者は仕事用プロファイルの管理とごく一部のデバイス設定が可能。↩
- Enterprise Mobility Managementの略で、モバイルデバイスの総合的な管理を行うシステムを指す。機能の一例としては、デバイス設定を行うことやアプリケーションのリモート配布をもつ。↩